せっかく施政方針演説を読み解いたので
国会内の議論に触れてみようと思います。
現在、国会内では『働き方改革』の議論が進行しています。
施政方針演説でも具体的な改革案としていの一番に言及しており
今国会での最重要法案となっています。
その審議が現在かなり荒れており来週からかなり重要な局面となります。
今日はそのことについてお話します。
働き方改革とは
そもそもの『働き方改革』について。
政府は、
・少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少
・育児や介護との両立など、働く方のニーズの多様化
を理由にあげ、
『就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境を作ることが重要な課題』
だとしています。
この課題解決のために、
『多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにする』
ことをこの改革の目的だとしています。
詳しくはこちらから。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322.html
”具体的に何をするか”
ということを書き出すとかなり膨大になってくるので
今回はタイトルにもある通り
最大争点の一つである《裁量労働制の拡大》のみに焦点をしぼってお話します。
裁量労働制(さいりょう-ろうどうせい)とは
裁量労働制とは、実際の勤務時間に関係なく、
あらかじめ決められた時間を働いたとみなして給与を払う仕組みです。
例えば労使間で『1日8時間働く』ということで合意した場合、
実際の労働時間が”8時間”以上でも以下でも
『8時間分の給料』が支払われます。
少し古い記事ですが、裁量労働制について詳しくは以下HPをご参照ください。
▼裁量労働制について
http://www.jmsc.co.jp/knowhow/column/no9.html
ポジティブに考えれば、「能率的に仕事ができれば早く帰ることができ、かつ十分な給与ももらえる」
となりますが、
ネガティブに考えれば、「どれだけ働かせても残業代を払わなくてもいいので、どんどん仕事を押し付けられる」
となります。
実際、裁量労働制は従業員の不利益になってしまうことを考慮し、
適用できる職種がかなり限定されています。
今回の”改革”は対象職種を拡げよう。というものです。
浮上した問題点
働き方改革の”提案者”である政府としては、
「裁量労働制を導入することで労働時間を短縮できる」
と主張したいわけですが
そのために使用した数値に瑕疵があったというのが今回の問題点です。
▼量労働制調査データ ミス?捏造? 厚労省、19日に精査結果公表(’18/2/16)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201802/CK2018021602000120.html
このデータが出てきたのは1月29日の立憲民主党、長妻議員の質疑の時。
長妻氏が現在裁量労働制を適用されている人たちの過労死の事例を列挙し
裁量労働制の適用職種の拡大を見直すように安倍総理に求めたられ、
「厚生労働省の調査によれば、裁量労働制で働く方の労働時間の長さは、平均的な方で比べれば一般労働者よりも短いというデータもあるということは御紹介させていただきたいと思います。」
と答弁しました。
しかしながらこのデータの詳細を見ると、
一般労働者の中には15時間以上残業した人、
つまり1日23時間以上働いた人が9人含まれていたことが判明。
また、そもそも「一般労働者」と「裁量労働制適用者」の労働時間が比べられる質のものでないとの指摘もなされています。
(ここでは書ききれないので詳しくは以下記事の中の真ん中あたり
『平成25年度労働時間等総合実態調査における「平均的な者」とは』
を参照してください。)
▼なぜ首相は裁量労働制の労働者の方が一般の労働者より労働時間が短い「かのような」データに言及したのか(’18/2/3)
https://news.yahoo.co.jp/byline/uenishimitsuko/20180203-00081208/
厚労相の加藤氏は、明日19日にデータを精査した上で提示するとの見解を表明しました。
『裁量労働制の労働時間が一般労働者よりも短い』とするデータはこの調査のみであることを厚労省は認めており
もしそのデータがそもそも誤りであったとしたら政府は本法案の撤回を余儀なくされます。
明日の国会は要注目ですし、たぶん厚労省の官僚はこの週末は休日返上で仕事させられたことだろうと思います。
本当にかわいそう。